大判例

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東京高等裁判所 昭和26年(う)4389号 判決

記録によると、被告人に対する本件記訴状には公訴事実として被告人は昭和二十六年四月三十日施行の長野県会議員選挙に際し立候補した斎藤寅太郞の選挙運動者であるが、右候補者を当選させる目的で第一、同年四月二十七日頃同県小県郡丸子町大字腰越の候補者宅において、選挙運動者斎藤平二郞が前同目的で選挙人清水常高に投票取纒の運動報酬として供与するものである趣旨を知りながら、現金五百円の交付を受け、第二、同日同所において同選挙人清水常高に対した前記候補者の投票取纒方依頼し、その運動報酬として現金五百円を供与したものであると記載されてあり、罪名を公職選挙法違反、罰条を第一の事実につき同法第二百二十一条第一項第四号、第二の事実につき同法第二百二十一条第一項第一号と掲記されてあつて原審第一回公判期日においては、検察官は起訴状を朗読し被告人はこれに対しその通り相違ないと述べ、証拠調に入り、検察官は証拠書類の取調を請求し被告人及び弁護人は右書類を証拠とすることに同意し証拠調を了した後検察官は事実及び法律の適用について意見を述べ、弁護人の弁論、被告人の最終陳述があつて結審となり、原審は、罪となるべき事実として、被告人は昭和二十六年四月三十日施行の長野県会議員選挙に際し立候補した斎藤寅太郞の選挙運動者であるが、右候補を当選させる目的で第一、同年四月二十七日頃同県小県郡丸子町大字腰越の候補者宅において同選挙人清水常高に対し前記候補者の投票取纒方依頼しその運動報酬として現金五百円を供与したものであるとの事実を認定し、これに対する罰条を適用した上被告人を罰金千円に処する旨の判決を言渡したことを認めることができる。

従つて原判決は一見起訴状記載の公訴事実中、第一の事実については判決していないかのように解されるのであるが、もともと、起訴状記載の公訴事実第一、第二の事実のように、投票取纒の運動報酬として金員の交付を受けた者が、更にその金員を選挙人に供与した場合には、金員の交付を受けた点は、金員供与行為の一過程に過ぎないものであるから、金員供与罪が成立するにおいては同罪中に当然吸収され、別罪を構成しないものと解すべきものであつて、原判決がその挙示の証拠により被告人の所為中、金員供与の事実のみを認定しこれに対する罰条のみを適用し、金員交付を受けた点について特別の事実認定並に擬律をしていないことはもとより相当であるといわねばならないのである。すなわち、原判決が、起訴状記載の公訴事実中第二の事実を罪となるべき事実として認定し、これに罰条を適用していることは、起訴状記載の公訴事実中、第一の事実をも含む趣旨の下に右第二の事実を罪となるべき事実として認定し、擬律しているものであることを知るに難くないのであるから、原判決は審判の請求を受けた右第一の事実についても判決していることとなるのである。

しからば原判決には所論のように審判の請求を受けた事件について判決しない違法はないわけであるから、論旨は理由がない。

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